C#における「クラス」の概念を理解する最良の方法は、実際に自分で作ってみることです。この記事は、クラス(設計図)を定義し、そのクラスからインスタンス(オブジェクト)を生成し、そして実際に利用するまでの一連の流れを体験できる、実践的なチュートリアルです。
このガイドを通して、C#のプログラムが、機能ごとに作られた部品(クラス)の組み合わせで成り立っていることを実感していきましょう。
Step 1: クラスのファイルを作成する(設計図の準備)
まず、新しいクラスの「設計図」となるファイルを作成します。一般的に、C#では1つのクラスを1つのファイルで管理します。
ここでは、簡単な計算機能を持つ Calculator
というクラスを作ってみましょう。
ファイル名: Calculator.cs
using System;
// プロジェクトの名前空間(今回はMyApplicationとします)
namespace MyApplication
{
// Calculatorという名前のクラスを定義
class Calculator
{
// この中に、データ(フィールド)や動作(メソッド)を定義していく
}
}
これで、Calculator
クラスを入れるための空のファイルが準備できました。namespace
は、クラスが所属するグループ名のようなもので、コードを整理するために使います。
Step 2: クラスにメソッドを追加する(設計図に機能を書き込む)
次に、作成したCalculator
クラスに具体的な「動作」を定義します。ここでは、2つの数値を足し算するAdd
というメソッドを追加してみましょう。
ファイル名: Calculator.cs
(追記後)
using System;
namespace MyApplication
{
class Calculator
{
// 2つの整数(aとb)を受け取り、その合計を返すAddメソッド
public int Add(int a, int b)
{
return a + b;
}
}
}
public
を付けることで、このAdd
メソッドをクラスの外部から呼び出せるようになります。
Step 3: メインプログラムでクラスを利用する
設計図が完成したので、今度はメインのプログラム(Program.cs
)からこのCalculator
クラスを使ってみましょう。
using
句の追加とインスタンス化
Program.cs
からCalculator
クラスを参照するには、まずファイルの冒頭で「MyApplication
という名前空間を使います」と宣言する必要があります。これがusing
句の役割です。
そして、new Calculator()
というコードで、Calculator
クラスのインスタンス(実体)を作成します。
ファイル名: Program.cs
// Calculatorクラスが所属する名前空間をusingで宣言
using MyApplication;
// --- ここからがプログラムの本体 ---
// 1. Calculatorクラスのインスタンスを作成
Calculator calculator = new Calculator();
// 2. 作成したインスタンスのAddメソッドを呼び出す
// 引数として5と3を渡す
int result = calculator.Add(5, 3);
// 3. メソッドから返ってきた結果を表示する
Console.WriteLine("計算結果: " + result); // 計算結果: 8
全体のコードまとめ
最終的に、2つのファイルは以下のようになります。
Calculator.cs
(クラスの定義ファイル)
using System;
namespace MyApplication
{
// 計算機能を持つクラス
class Calculator
{
/// <summary>
/// 2つの整数を加算して結果を返します。
/// </summary>
/// <param name="a">1つ目の数値</param>
/// <param name="b">2つ目の数値</param>
/// <returns>加算した結果</returns>
public int Add(int a, int b)
{
return a + b;
}
}
}
Program.cs
(メインの実行ファイル)
using System;
// 自作したCalculatorクラスが所属する名前空間を読み込む
using MyApplication;
// Calculatorクラスのインスタンスを作成
Calculator calculator = new Calculator();
// 作成したインスタンスのAddメソッドを呼び出す
int result = calculator.Add(5, 3);
// 結果をコンソールに表示
Console.WriteLine("計算結果: " + result);
// コンソールがすぐに閉じないように待機
Console.ReadLine();
まとめ
実際にクラスを作成する流れを体験してみて、いかがでしたでしょうか。
- 別のファイルにクラス(設計図)を定義する。
- クラスにメソッド(機能)を追加する。
- メインプログラムで**
using
**を使ってクラスを読み込む。 new
キーワードでクラスのインスタンス(実体)を作成する。- 作成したインスタンスのメソッドを呼び出して利用する。
この「部品(クラス)を作って、それを組み立ててプログラムを完成させる」という考え方が、C#によるアプリケーション開発の基本となります。まずは簡単なクラス作成に慣れて、プログラムを機能ごとに分割する感覚を養っていきましょう。