.NET 6以降のC#では、プログラミングを非常にシンプルに始めることができます。
かつて必要だった複雑なお決まりの記述は、もう必須ではありません。この記事では、.NET 6から導入されたシンプルなC#の書き方を中心に、プログラムがどのような仕組みで動いているのかを分かりやすく解説します。
.NET 6以降のC#の姿から、その基本構造を理解していきましょう。
C#プログラミングの最初のステップ
.NET 6以降のC#では、プログラムを動かすために必要なコードは、驚くほど短く済みます。
サンプルコード (.NET 6以降)
// 画面にメッセージを表示する
Console.WriteLine("Hello, C#!");
たったこれだけです。この1行をファイルに書いて実行すれば、画面に「Hello, C#!」と表示されます。namespace
やclass
といった記述はどこにもありません。
これはトップレベルステートメントという機能のおかげで、プログラムの主要な処理だけを直接書くことができます。C#を学び始める際のハードルが、大きく下がったと言えるでしょう。
シンプルなコードの裏側:C#の本来の構造
では、先ほどのシンプルなコードの裏側では、一体何が起きているのでしょうか。
実は、C#のコンパイラ(コードをコンピュータが分かる言葉に翻訳する機械)が、プログラムとして必要な構造を自動的に補ってくれています。コンパイラが生成する、プログラムの”正式な”姿は以下のようになります。
コンパイラによって生成されるコードのイメージ
// 必要な機能を読み込むための宣言
using System;
// プログラムの部品を整理するための「住所」
namespace MyFirstApp
{
// プログラムの設計図
class Program
{
// プログラムが最初に実行する処理
static void Main(string[] args)
{
// 画面にメッセージを表示する
Console.WriteLine("Hello, C#!");
}
}
}
私たちが書いたのはConsole.WriteLine(...)
の部分だけですが、コンパイラがそれをMain
メソッドの中に配置し、class
やnamespace
で囲ってくれているのです。
.NET 5以前のC#ではこの全てのコードを手で書く必要がありましたが、.NET 6以降はその必要がありません。しかし、この本来の構造を理解しておくことは、今後より複雑なプログラムを作る上で非常に重要になります。
次に、この本来の構造を構成する各要素について見ていきましょう。
C#プログラムを構成する主要な要素
using
ディレクティブ
using System;
は、「これからSystem
という名前の道具箱を使います」という宣言です。これを using
ディレクティブと呼びます。
Console
のような基本的な機能はSystem
という名前空間(道具箱)に入っており、using
で宣言することでシンプルに使えるようになります。トップレベルステートメントで書く場合も、多くの機能を使う際にはこのusing
宣言を冒頭に書くことになります。
namespace
(名前空間)
namespace MyFirstApp
は、コードを整理するためのグループ名です。
プログラムが大きくなると、多数のクラスを管理する必要が出てきます。その際に名前が衝突しないよう、「住所」のようにクラスを分類するのが名前空間の役割です。
class
(クラス)
class Program
は、プログラムの「設計図」です。
C#はオブジェクト指向言語であり、プログラムの部品をclass
として作成します。クラスには、データ(変数)と処理(メソッド)をまとめて定義します。トップレベルステートメントでは隠されていますが、私たちのコードは必ずいずれかのクラスの一部として扱われます。
Main
メソッド
static void Main(string[] args)
は、プログラムを実行したときに最初に呼び出される特別な処理で、エントリーポイントと呼ばれます。
どんなプログラムも、必ずこのMain
メソッドから処理がスタートします。トップレベルステートメントで書かれたコードは、コンパイラによってこのMain
メソッドの中に自動的に組み込まれます。
まとめ
.NET 6の登場により、C#の学習アプローチは大きく変わりました。
- まず、トップレベルステートメントでシンプルに書くことから始める。
- 裏側でコンパイラが完全なプログラム構造を生成していることを知る。
namespace
やclass
といった本来の構造を学び、より大きなプログラムへの理解を深める。
このように、C#は初心者にとって非常に親しみやすくなりました。まずは短いコードを動かす楽しさを体験し、そこから徐々にプログラムの奥深い仕組みへと進んでいくのが、.NET 6以降のC#における学習スタイルです。