【C#】throwステートメントで意図的に例外を発生させ引数の妥当性を保証する

メソッドの実装において、呼び出し元から渡された引数が想定外の値(nullや範囲外の数値など)であった場合、処理を続行せずに即座に停止させる必要があります。これを「フェイルファスト(Fail Fast)」と呼び、バグの早期発見やデータの整合性を保つために極めて重要な設計思想です。

C#ではthrowステートメントを使用することで、任意のタイミングで例外を発生させることができます。今回は、図形計算ライブラリにおける「長方形の面積計算」を題材に、不正な引数を検知して適切な例外をスローする実装方法を解説します。


目次

throwステートメントの基本

例外を発生させるには、throwキーワードに続けて例外オブジェクトのインスタンスを指定します。

throw new 例外クラス(エラーメッセージ);

引数の検証においては、状況に応じて適切な例外クラスを選択することが重要です。

  • ArgumentException: 引数が無効な場合全般。
  • ArgumentNullException: 引数がnullの場合。
  • ArgumentOutOfRangeException: 引数が許容範囲外の値(負の数など)の場合。

実践的なコード例:長方形の面積計算とバリデーション

以下のコードは、長方形の「幅」と「高さ」を受け取って面積を返すメソッドです。物理的にあり得ない「0以下の数値」が渡された場合に、ArgumentOutOfRangeExceptionをスローして処理を中断します。

using System;

namespace GeometryLibrary
{
    class Program
    {
        static void Main()
        {
            try
            {
                // 正常なケース
                double area1 = CalculateRectangleArea(10.5, 5.0);
                Console.WriteLine($"面積1: {area1}");

                // 異常なケース(幅に負の数を指定)
                // ここで例外が発生し、catchブロックへ移動します。
                double area2 = CalculateRectangleArea(-5.0, 10.0);
                Console.WriteLine($"面積2: {area2}"); // 実行されません
            }
            catch (ArgumentOutOfRangeException ex)
            {
                // エラー内容の表示
                Console.WriteLine("--- エラーが発生しました ---");
                Console.WriteLine($"メッセージ: {ex.Message}");
                Console.WriteLine($"パラメータ名: {ex.ParamName}");
            }
            catch (Exception ex)
            {
                Console.WriteLine($"予期せぬエラー: {ex.Message}");
            }
        }

        /// <summary>
        /// 長方形の面積を計算します。
        /// </summary>
        /// <param name="width">幅(正の数)</param>
        /// <param name="height">高さ(正の数)</param>
        /// <returns>面積</returns>
        /// <exception cref="ArgumentOutOfRangeException">幅または高さが0以下の場合にスローされます。</exception>
        static double CalculateRectangleArea(double width, double height)
        {
            // バリデーション: 幅が0以下の場合は無効
            if (width <= 0)
            {
                // ArgumentOutOfRangeExceptionのコンストラクタ
                // 第1引数: パラメータ名(nameof演算子を使うとリファクタリングに強い)
                // 第2引数: 実際に渡された値
                // 第3引数: エラーメッセージ
                throw new ArgumentOutOfRangeException(nameof(width), width, "幅は0より大きい値である必要があります。");
            }

            // バリデーション: 高さが0以下の場合は無効
            if (height <= 0)
            {
                throw new ArgumentOutOfRangeException(nameof(height), height, "高さは0より大きい値である必要があります。");
            }

            // 計算処理(ここには安全な値しか到達しない)
            return width * height;
        }
    }
}

実行結果

面積1: 52.5
--- エラーが発生しました ---
メッセージ: 幅は0より大きい値である必要があります。 (Parameter 'width')
Actual value was -5.
パラメータ名: width

技術的なポイントとベストプラクティス

1. 適切な例外クラスの選択

単にExceptionArgumentExceptionを使うのではなく、状況を具体的の表すクラスを選ぶべきです。

  • 値の範囲が問題(マイナス値、インデックス外など)であればArgumentOutOfRangeExceptionを使用します。
  • 値の形式矛盾が問題であればArgumentExceptionを使用します。

2. nameof演算子の活用

例外を投げる際、どの引数が原因かを特定するためにパラメータ名を指定します。この際、文字列で"width"と書くのではなく、nameof(width)を使用することを強く推奨します。これにより、将来的に引数名を変更(リファクタリング)した際、自動的に修正が反映され、コードの整合性が保たれます。

3. ガード節(Guard Clause)による可読性向上

メソッドの冒頭で不正な値をチェックし、早期リターン(または例外スロー)を行うパターンを「ガード節」と呼びます。これにより、正常系の処理(return width * height;)がインデント深くに入り込むことを防ぎ、コードの可読性が向上します。

4. .NET 8以降の簡略化

.NET 8 (C# 12) 以降では、ArgumentOutOfRangeException.ThrowIfLessThanOrEqual などのヘルパーメソッドが追加されており、if文を書かずに1行でチェックを行うことも可能です。

// .NET 8以降での記述例
ArgumentOutOfRangeException.ThrowIfLessThanOrEqual(width, 0, nameof(width));

まとめ

throwステートメントを使用してメソッドの前提条件を厳格にチェックすることは、堅牢なクラス設計の第一歩です。「おかしな値が来たら動かない」ではなく「おかしな値が来たら即座に具体的なエラーを報告する」ように実装することで、デバッグの容易さとシステムの信頼性が大幅に向上します。

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この記事を書いた人

私が勉強したこと、実践したこと、してることを書いているブログです。
主に資産運用について書いていたのですが、
最近はプログラミングに興味があるので、今はそればっかりです。

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