2022年の米国株が低調だった理由をやさしく整理します

目次

概要

2022年の米国株式市場は、S&P 500 が年間で約19.4%下落、NASDAQ 総合が約33%下落と、2008年以降で最も厳しい一年でした。背景には、40年ぶり高水準のインフレ、FRB による急速な利上げと量的引き締め(QT)、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー・供給ショック、米ドル高、そして企業収益見通しの下方修正といった複合要因が同時進行したことがあります。

背景① インフレの急加速

2022年は、消費者物価指数(CPI)が年央にかけて大幅に上昇し、約40年ぶりの伸びを記録しました。インフレ高進は家計・企業の実質購買力を削り、金融引き締めを不可避にしました。

背景② FRB の急速な金融引き締め(利上げ+QT)

FRB は2022年3月から利上げを開始し、年末時点で政策金利の誘導目標を約4.25~4.50%まで引き上げました。加えて、6月からは保有資産の縮小(量的引き締め、QT)を開始し、市場の流動性を絞りました。割引率上昇は将来キャッシュフローの現在価値を押し下げ、特に高成長株のバリュエーション圧縮につながりました。

背景③ 地政学とエネルギー・供給ショック

2022年2月のウクライナ侵攻は、エネルギー供給不安を激化させ、国際エネルギー価格の上昇とボラティリティの拡大を招きました。世界的なエネルギー危機はインフレを一段と押し上げ、景気減速懸念を強めました。

背景④ 米ドル高(ドル指数の高水準)

2022年は、米ドル指数(DXY)がおおむね20年ぶりの高水準に到達しました。ドル高は、米多国籍企業の海外売上の目減りや、リスク資産からの資金シフトを通じて、米株に逆風となりました。

直接的な市場インパクト

  1. バリュエーションの圧縮
    割引率上昇は、長期の成長期待で評価されるセクター(特にテクノロジー)に逆風となりました。
  2. 収益見通しの下方修正・リスクプレミアムの上昇
    コスト上昇、需要減速懸念、為替高の組み合わせで企業の利益成長期待が後退し、投資家はより高いリスク補償を要求しました。
  3. スタイル間の明暗
    成長株が大幅に売られ、配当・ディフェンシブ色の強いバリュー株が相対的に健闘しました。エネルギーは原油高を背景に上昇する一方、コミュニケーション・サービスや一般消費財が下落寄与となりました。

主要指数の年次パフォーマンス(2022年)

  • S&P 500:約 −19.4%
  • NASDAQ 総合:約 −33%
  • ダウ工業株30種平均:約 −8.7%
    いずれもリスク資産全般に厳しい一年を反映した水準です。

投資家が学べるポイント

  • マクロ・レジームの転換に備える
    低インフレ・低金利を前提とした高バリュエーションは、金利上昇局面で脆弱です。ディスカウント率、ターミナル成長率、為替前提の見直しが重要です。
  • 金利感応度とセクター分散
    長久のキャッシュフローに依存する銘柄は金利上昇時に感応度が高い一方、コモディティや高配当・ディフェンシブは相対的に耐性を示しやすい傾向があります。
  • 地政学・供給ショックの連鎖を意識する
    エネルギーや物流の制約はコストプッシュ型インフレを惹起し、企業収益とバリュエーションの双方を圧迫します。

まとめ

2022年の米国株の不振は、「高インフレ → 急速な引き締め → バリュエーション圧縮」という金融面の連鎖に、地政学・エネルギー危機、米ドル高、利益見通し悪化が重なった結果です。単一要因ではなく、複数ショックの同時進行が相場に与える影響の大きさを示した一年でした。

sauce(出典・参考。リンク化は不要)

・U.S. Bureau of Labor Statistics:Consumer Price Index(2022年の高インフレに関する統計)
・Federal Reserve:FOMC 声明、政策金利・保有資産縮小(QT)の公表資料
・International Energy Agency:エネルギー危機と供給動向のレポート
・主要メディア年末総括記事:2022年の米株主要指数の年間騰落率整理(S&P 500、NASDAQ、ダウ)

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この記事を書いた人

私が勉強したこと、実践したこと、してることを書いているブログです。
主に資産運用について書いていたのですが、
最近はプログラミングに興味があるので、今はそればっかりです。

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