節約、倹約のパラドックスとは、ミクロな視点で正しかったことが、マクロな視点から見ると予期しない結果をもたらす「合成の誤謬」として分析されてます。
詳しく説明します。
世の中が不景気になると、節約や倹約をする人たちが増えてきます。今後さらに不景気なるかもしれないから、もっと使うお金を制限します。
そもそも”景気”とは人々が多くのモノを買うことで良くなります。つまり、需要が増えることで良くなります。
逆に人がモノを買わなくなると、つまり、需要が減ることでさらに景気が悪くなる。景気が悪くなると仕事もなくなるという悪循環が生まれます。
よって、不景気時の節約、倹約は、さらなる景気の悪化を招いてしまいます。
不景気だから、節約、倹約するのは個人の視点でみるととても合理的な選択です。個人の視点、つまり、経済の最小単位から見た視点を微視的、ミクロな視点と呼びます。
一方で、不景気だから節約しようという選択は”景気”という社会全体の視点からみると、さらなる景気の悪化を招くという意味で、不合理的選択になります。
こういう視点を巨視的、マクロな視点と呼びます。
つまり、節約、倹約のパラドックスとは、同じ選択でも、個人(ミクロ)として見てるか、社会全体(マクロ)としてみるかで意味合いが変わってくることです。
節約、倹約のパラドックスのバリエーション
⒈不景気時の企業の行動のパラドックス
不景気の時に、企業は利益が減ってくると、人を解雇したり、賃金を値下げするなど、人件費の削減、つまり節約をしようとします。
この選択は、その企業単体にとっては、合理的な選択なのですが、社会全体からみるとどうでしょう?
失業したり、賃金が減ったら、モノが買えない人が増えます。
さらに、生産業なら、働く人が減ると生産力が低下します。よって、作れる商品の量が減ったり、質が低下したりする可能性もあります。
サービス業なら、サービスの提供量が減ったり、その範囲を減らざるを得なくなったりします。
このように、人件費の削減は一時的には、メリットがあるけど、結果的に社会全体の需要が低下し、長期的には、その企業が正社員を減らし、非正規雇用という形態を好んできた側面が、近年、社会問題化してきたのです。
ここでいう問題とはニートの自発的な失業、自己選択の問題とは違う話で、
需要との関係で、社会や企業構造上生まれてしまう失業者や非正規雇用がいること自体が問題なのです。
2、関税による国内産業の保護のパラドックス
例えば、輸入車です。
海外からの輸入に税金をかけると、日本車が売れやすくなります。それに関連している部品メーカー、商品も売れやすくなり、国内産業の需要は増えます。
ただその結果、世界全体のグローバルな全体の需要は減少してしまいます。
すると、結果的に日本の経済にも影響を受けて、需要が減少します。
3、貯蓄のパラドックス
これは、不景気によって、お金を商品の購入にではなくて、貯蓄に回すことで起きるパラドックスです。
貯蓄をすると、全体の需要が低下して、さらに不景気になるということです。
みんなが貯蓄ばかりして、お金を使わないと、景気が悪くなってしまいます。
日本は高齢化の問題との関係でもよく指摘されるように、平均寿命が延びて、定年退職に生活しなければいけない年数が増えて、人工構造上の問題から”年金だけで暮らせないのではないか”とう不安からお金を貯蓄に回し、さらに景気が悪化する原因にもなっています。
まとめ
以上が節約、倹約のパラドックスです。
日本は個人(ミクロ)な視点で不安を煽り、お金を消費ではなく貯蓄に回して、この有様なので、今度はもっと社会全体(マクロ)よりなお金の使い方もしてみるのもいいと思います。