ファイルやディレクトリのパスをプログラム内で扱う際、ディレクトリ名とファイル名を連結して一つのパス文字列を作成する操作は頻繁に行われます。
単純に文字列の足し算（+）や join メソッドで / を挟むことも可能ですが、OSによってパスの区切り文字が異なる（Windowsは \、macOS/Linuxは /）ため、環境依存のバグを生む原因となります。
Pythonでは、標準ライブラリ os.path モジュールの join() 関数を使用することで、実行環境のOSに合わせて適切にパスを結合できます。
この記事では、os.path.join() の基本的な使い方と、結合時に注意すべき「パスのリセット仕様」について解説します。
1. os.path.join() の基本的な使い方
os.path.join() は、引数として渡された複数のパス要素（文字列）を、そのOSに適した区切り文字で結合します。
構文:
import os
結合されたパス = os.path.join(パス要素1, パス要素2, ...)
具体的な使用例
データディレクトリ、ユーザーID、ファイル名を結合して、ファイルのフルパスを作成する例です。
import os
# 結合したい要素
base_dir = "application_data"
sub_dir = "user_settings"
filename = "config.json"
# パスを結合
full_path = os.path.join(base_dir, sub_dir, filename)
print(f"結合結果: {full_path}")
実行結果（Windowsの場合）:
結合結果: application_data\user_settings\config.json
実行結果（macOS / Linuxの場合）:
結合結果: application_data/user_settings/config.json
このように、実行環境に応じて適切な区切り文字が自動的に挿入されます。
2. 【重要】絶対パスが含まれる場合の挙動（リセット）
os.path.join() を使う上で、最も注意が必要な仕様があります。
それは、**「結合する要素の途中に、区切り文字（/ や \）で始まる文字列（ルートパス/絶対パス）が含まれている場合、それより前の要素はすべて破棄される」**という点です。
意図しない結合の例
バックアップ先のパスを作成しようとして、サブディレクトリの指定にうっかり / を付けてしまったケースを想定します。
import os
# バックアップのルートディレクトリ
backup_root = "backup_storage"
# 年別のフォルダ（ここで先頭に / を付けてしまっている）
year_folder = "/2025"
# ファイル名
log_file = "access.log"
# 結合を実行
result_path = os.path.join(backup_root, year_folder, log_file)
print(f"ルート: {backup_root}")
print(f"結合要素: {year_folder}")
print("-" * 20)
print(f"結合結果: {result_path}")
実行結果（macOS / Linuxの場合）:
ルート: backup_storage
結合要素: /2025
--------------------
結合結果: /2025/access.log
本来は backup_storage/2025/access.log となることを期待していましたが、year_folder が / で始まっているため、Pythonはこれを「ここから新しい絶対パスが始まる」と解釈し、先頭の backup_storage を無視しました。
回避策
結合するパーツ（ファイル名やサブディレクトリ名）の先頭には、区切り文字を含めないようにする必要があります。もし入力値に含まれている可能性がある場合は、.lstrip("/") などで除去してから結合します。
# 先頭の区切り文字を除去してから結合する
safe_path = os.path.join(backup_root, year_folder.lstrip("/"), log_file)
print(f"修正後の結果: {safe_path}")
実行結果:
修正後の結果: backup_storage/2025/access.log
補足：pathlib モジュール
Python 3.4以降では、よりモダンな pathlib モジュールの使用も推奨されています。こちらでは / 演算子を使って直感的にパスを結合できます。
from pathlib import Path
path = Path("application_data") / "user_settings" / "config.json"
print(path)
まとめ
- パスの結合には
os.path.join()を使用します。OSごとの区切り文字の違いを吸収してくれます。 - 引数の途中に
/や\で始まる文字列（絶対パス形式）が含まれていると、それより前のパスが無視されます。 - 結合する各パーツの先頭には区切り文字を付けないように注意が必要です。
