はじめに
VBAのプロジェクト(モジュールやフォームなど)そのものを、マクロを使って操作したいと考えたことはありませんか? 例えば、「よく使う汎用的なモジュールを、ボタン一つで他のブックにもインポートしたい」「開発中のモジュールのバックアップを自動で作成したい」といった高度な操作です。
VBAの VBProject
オブジェクトにアクセスすることで、このようなVBAプロジェクト自体の操作を自動化できます。
この記事では、VBProject
を使って、VBAの標準モジュールをファイルに書き出す(エクスポート)、プロジェクトから削除する(リムーブ)、ファイルから取り込む(インポート)という、3つの基本的な操作方法を解説します。
【重要】事前準備:VBAプロジェクトへのアクセスの有効化
VBProject
を操作するマクロを実行するには、Excelのセキュリティ設定を変更し、「VBAプロジェクト オブジェクト モデルへのアクセスを信頼する」を有効にする必要があります。
- Excelの「ファイル」タブ → 「オプション」を開きます。
- 「トラストセンター(セキュリティセンター)」 → 「トラストセンターの設定」をクリックします。
- 「マクロの設定」を開き、「VBAプロジェクト オブジェクト モデルへのアクセスを信頼する」のチェックボックスをオンにします。
この設定を有効にしないと、VBProject
にアクセスしようとした際にエラーが発生します。
1. モジュールをエクスポート(書き出し)する
指定した標準モジュールを、.bas
という拡張子のテキストファイルとして保存します。
サンプルコード
' 「Utils」という名前の標準モジュールをエクスポートする
Sub ExportModule()
Dim exportFilePath As String
' 保存先のパスとファイル名を指定
exportFilePath = ThisWorkbook.Path & "\Utils_Backup.bas"
' .Exportメソッドで、指定したパスにモジュールを書き出す
ThisWorkbook.VBProject.VBComponents("Utils").Export Filename:=exportFilePath
MsgBox "モジュール「Utils」をエクスポートしました。"
End Sub
解説:
ThisWorkbook.VBProject
: 現在のブックのVBAプロジェクト全体を指します。.VBComponents("Utils")
: プロジェクトに含まれるコンポーネントの中から、"Utils"
という名前のモジュールを指定しています。.Export
: 指定したコンポーネントをファイルに書き出すメソッドです。
2. モジュールを削除(リムーブ)する
プロジェクトから、指定した標準モジュールを削除します。この操作は元に戻せませんので、注意して実行してください。
サンプルコード
' 「TempModule」という名前の標準モジュールを削除する
Sub RemoveModule()
' .Removeメソッドで、指定したモジュールをプロジェクトから削除
ThisWorkbook.VBProject.VBComponents.Remove _
VBComponent:=ThisWorkbook.VBProject.VBComponents("TempModule")
MsgBox "モジュール「TempModule」を削除しました。"
End Sub
解説:
.VBComponents.Remove
: コンポーネントを削除するメソッドです。- 引数
VBComponent:=
には、削除したいコンポーネントオブジェクトそのものを渡す必要があります。
3. モジュールをインポート(取り込み)する
.bas
ファイルを、プロジェクトに新しい標準モジュールとして追加します。
サンプルコード
' .basファイルを新しいモジュールとしてインポートする
Sub ImportModule()
Dim importFilePath As String
' 取り込むファイルのパスを指定
importFilePath = ThisWorkbook.Path & "\Utils_Backup.bas"
' .Importメソッドで、指定したファイルをプロジェクトに追加
ThisWorkbook.VBProject.VBComponents.Import Filename:=importFilePath
MsgBox "モジュールをインポートしました。"
End Sub
解説:
.VBComponents.Import
: ファイルをコンポーネントとしてプロジェクトに取り込むメソッドです。
まとめ
今回は、VBProject
オブジェクトを使って、VBAのモジュールをプログラムで操作する方法を解説しました。
.Export
: モジュールを.bas
ファイルに書き出す。.Remove
: モジュールをプロジェクトから削除する。.Import
:.bas
ファイルをモジュールとして取り込む。
これらの機能を組み合わせることで、自作のツールに「ライブラリモジュールの自動更新機能」を搭載したり、プロジェクトのバージョン管理を自動化したりと、VBA開発そのものを効率化する、非常に高度なマクロを作成することが可能になります。