はじめに
VBAのユーザーフォームにおいて、「フォーカス」とは、どのコントロールが現在アクティブになっているか(キーボード入力を受け付ける状態か)を示す概念です。ユーザーがフォームを開いたときに、最初から特定のテキストボックスにカーソルが当たっていると、すぐに入力を始められて親切ですよね。
VBAでは、以下の2つの方法でフォーカスを能動的に制御できます。
.SetFocus
メソッド: 特定のコントロールに、プログラムで強制的にフォーカスを移動させます。_Enter()
イベント: あるコントロールがフォーカスを受け取った瞬間を検知して、特定の処理を実行します。
この記事では、これら2つの機能を使って、ユーザーフォームのフォーカスを自在に操る方法を解説します。
1. 特定のコントロールに初期フォーカスを当てる (.SetFocus
)
.SetFocus
メソッドは、指定したコントロールをアクティブな状態にします。ユーザーフォームが表示されたときに、特定の入力欄にすぐに文字を入力させたい場合に、フォームの初期化イベント UserForm_Initialize
の中で使うのが一般的です。
ユーザーフォームのコード
' フォームが初期化されるときに実行されるイベント
Private Sub UserForm_Initialize()
' NameInput_TextBox に初期フォーカスを設定
Me.NameInput_TextBox.SetFocus
End Sub
解説
このコードをフォームのモジュールに記述しておくと、フォームが表示された瞬間に NameInput_TextBox
がアクティブになり、カーソルが点滅した状態になります。これにより、ユーザーはマウスでクリックする手間なく、すぐに名前の入力を開始できます。
注意: UserForm_Initialize
イベント内で .SetFocus
を使う場合、そのフォームに配置されているコントロールの中で、TabIndex
プロパティが最も小さいもの(通常は 0
)以外にフォーカスを当てようとしても、意図通りに動作しないことがあります。確実性を高めるには、フォームの _Activate()
イベント内で実行するか、TabIndex
を調整するのが良いでしょう。
2. フォーカスが当たった瞬間に処理を実行する (_Enter
イベント)
_Enter()
イベントは、タブキーやマウスクリックによって、あるコントロールにフォーカスが移動してきた瞬間に発生します。
この例では、Memo_TextBox
というテキストボックスにフォーカスが当たった瞬間に、入力ガイドとなるメッセージをステータスラベル(Status_Label
)に表示します。
ユーザーフォームのコード
' Memo_TextBox がフォーカスを受け取ったときに実行されるイベント
Private Sub Memo_TextBox_Enter()
' Status_Label のキャプションを変更して、入力ガイドを表示
Me.Status_Label.Caption = "ここに備考を入力してください(500文字以内)"
End Sub
' Memo_TextBox がフォーカスを失ったときに実行されるイベント
Private Sub Memo_TextBox_Exit(ByVal Cancel As MSForms.ReturnBoolean)
' ガイドメッセージをクリア
Me.Status_Label.Caption = ""
End Sub
解説
Private Sub Memo_TextBox_Enter()
:Memo_TextBox
にフォーカスが当たった瞬間に、Status_Label
の表示テキスト(.Caption
)を書き換えて、ユーザーに操作ガイドを提示しています。Private Sub Memo_TextBox_Exit(...)
:_Exit()
イベントは、逆にコントロールがフォーカスを失った瞬間に発生します。ここでガイドメッセージをクリアすることで、他のコントロールにフォーカスが移った際に、不要な案内が残り続けるのを防いでいます。
まとめ
今回は、ユーザーフォームのフォーカスを制御するための .SetFocus
メソッドと _Enter
イベントについて解説しました。
.SetFocus
メソッドで、任意のコントロールに強制的にフォーカスを移動できる。フォーム表示時の初期フォーカス設定に便利。_Enter
イベントで、コントロールがフォーカスを受け取った瞬間を検知し、状況に応じた処理(ヘルプ表示など)を実行できる。
これらの機能を使いこなすことで、ユーザーの操作をスムーズに導き、入力ミスを減らす、より洗練されたユーザーインターフェースを構築することができます。