はじめに
Raspberry Pi を使用している最中に、sudo apt upgrade
を実行していたところ、電源が突然落ちてしまい、再起動後に Pi が一切反応しなくなりました。
このトラブルを調べていくと、SDカードが破損していた可能性が高く、Raspberry Pi Imager を使用した OS の再書き込みにも失敗し、macOS 上でも消去ができないという問題に直面しました。
本記事では、apt upgrade中に電源が落ちたことでSDカードが破損した可能性と、その復旧手順(Mac環境)を実録ベースで解説します。
発生したトラブルの状況
- 使用機種:Raspberry Pi 5
- OS:Raspberry Pi OS 64-bit
- 操作内容:
sudo apt upgrade
実行中にラズパイがシャットダウン - 使用SDカード:Generic STORAGE DEVICE(16GB)
- Raspberry Pi Imager バージョン:v1.8.5(macOS)
突然の電源断後、Raspberry Pi 5 を再起動すると、赤ランプ(STAT)のみが常時点灯し、緑ランプが一切点灯・点滅しない状態となりました。HDMI出力もなく、完全に起動不能な状態です。
SDカードへの書き込みを試みるが失敗
Raspberry Pi Imager を用いて SDカードに OS を再インストールしようとしたところ、以下のエラーが発生しました。
ファイルをディスクに書き込んでいる際にエラーが発生しました
さらに、macOS の「ディスクユーティリティ」で「消去」や「復元」を試みましたが、次のエラーメッセージが表示されました。
POSIXレポート: 操作を完了できませんでした。装置が構成されていません。(6)
この時点で、SDカードが破損またはロックされている可能性が考えられました。
macOS ターミナルによるSDカードの初期化(ddコマンド)
SDカードの物理的な異常ではないことを確認するため、macOS のターミナルで以下の手順により SDカード全体をゼロで初期化しました。
1. SDカードのデバイス名を確認
diskutil list
表示された一覧から、対象のSDカード(例:/dev/disk3)を特定します。
2. ディスクのマウントを解除
sudo diskutil unmountDisk /dev/disk3
ゼロで全領域を初期化(ddコマンド)
sudo dd if=/dev/zero of=/dev/rdisk3 bs=1m
- 実行後は画面に何も表示されませんが、処理は正常に進んでいます。
- 終了まで数分かかります。
- 処理完了後、以下のような出力が表示されました:
4545+0 records in
4545+0 records out
4765777920 bytes transferred in 550.370703 secs (8659214 bytes/sec)
この出力により、SDカードへのゼロ書き込みが完了したことが確認できました。
しかし、Raspberry Pi Imagerでも再び書き込みエラー
ゼロ初期化の後、再度 Raspberry Pi Imager を使用して OS の書き込みを試みましたが、同様のエラーで失敗しました。
このことから、SDカードの物理的損傷またはコントローラ異常が疑われました。
別のRaspberry Pi 4で試すと正常起動
上記のSDカードを Raspberry Pi 4 に挿入して起動したところ、問題なく起動しました。
つまり、SDカード自体はある程度動作可能な状態である一方で、Raspberry Pi 5 本体の起動処理がうまくいっていない可能性が浮上しました。
考えられる原因と推測
このトラブル全体を振り返ると、以下の可能性が考えられます:
原因候補 | 内容 |
---|---|
SDカード破損 | apt upgrade 中の電源断により、ファイルシステムまたはブートローダー領域が壊れた |
Raspberry Pi 5 側の EEPROM 破損 | Pi 5 の内部ブートEEPROMが破損し、緑ランプすら点灯しない状態になった |
SDスロットの接触不良 | 挿し込みが浅い、またはピンの物理損傷の可能性(今回は否定的) |
SDカード自体の物理故障 | ゼロ初期化後も書き込みエラーが続くことから、フラッシュメモリ劣化の可能性もあり得る |
最終的な対処と結論
今回は結果的に、SDカードの復旧はできても Raspberry Pi 5 の緑ランプは無反応のままでした。
つまり、Raspberry Pi 5 本体の EEPROM(ブートローダー)が壊れたか、ハード的な損傷を受けた可能性があります。
このような場合、Raspberry Pi 5 用の EEPROM リカバリー手順を行うことで復旧することもあります(別途SDカードに EEPROM リカバリーデータを書き込む必要あり)。
おわりに
Raspberry Pi を扱う際、特に sudo apt upgrade
などのシステム更新中には、絶対に電源を落とさないことが極めて重要です。
電源断によって SDカードだけでなく、本体側の EEPROM やハードウェアまでダメージを受ける可能性があります。
また、SDカードの復旧作業は macOS でも dd
コマンドで対応可能ですが、書き込みエラーが続く場合はカードの寿命や物理故障も想定すべきです。
今後同じような状況に遭遇した方の参考になれば幸いです。